達人ストーリー

「カホンを作ろう」で夢を作ろう

青沼 義郎さん(カホンの達人)

青沼さんのカホン工房Arcoには世界中から注文があります。業界では全国的に有名な青沼さんですが、石巻では現在ほど認知されていませんでした。カホンを広めたいと思い石恋に参加したところ、カホン作り教室は、毎回大盛況です。人気の理由の一つは、青沼さんが子どもたちにもっとカホンを知ってもらいたいと思い、子どもでも簡単に作れるようなキットにしてあるから。子どもからお年寄りまで幅広く参加しています。楽器としてチャレンジしやすい、ハードルの低いカホンは、実はまさに石恋のコンセプトにぴったりな楽器だった!

プロフィール

Arcoカホン代表。2007年、2009年にはパシフィコ横浜で開催された日本楽器フェアに出展、2014年の11月には、東京ビッグサイト行われる2014楽器フェアに出展しました。

ペルー生まれの木製打楽器「カホン」の魅力について説明する青沼さん。

カホンとの出会い。
なんとArcoは青沼さんのバンド名だった!

実家がまちの電気屋さんで、ものづくりに必要な道具や部品はいつでも手に入ったんです。 それで、小学校5年生くらいのときには、モノづくりが大好きな少年でした。中学のとき、自分で作ったエレキギターで音楽に目覚めて、高校時代には本格的にバンドを組んでいました。カホン工房ArcoのArco(アルコ)っていうのは社会人になって組んだバンドのバンド名なんですよ。バイオリンの奏法にピチカートとアルコというのがあって、イタリア語なんです。だから、打楽器とはあんまり関係ないんです(笑)。PA(音響)は趣味で昔からやっていて、その社会人バンドArcoでは、ギターもやりながらPAもしていました。カホンは、PAの仕事で初めて見ました。昔からスピーカーボックスも作っていたから、見たときにあんまり変わらないから作ってみようと思って、2000年頃から自分で作り始めました。それで、奥さんに「作ったのをネットで売ったら」って言われたのが販売のきっかけです。ちょうどインターネットが普及し始めた頃で、ヤフオクで出品し始めました。当時、カホンという言葉は巷にはほとんどなかったんですね。カホンをカタカナで検索したら4000くらいしかヒットしなくて、それもポカホンタスとかで(笑)、それで、検索の上位にArcoのカホンが上がってきました。そして、ネットの普及とともに、カホンという言葉も普及して、Arcoのカホンも売れてきたという感じなんです。

石恋に参加して気付いたカホンの魅力
~生活に音楽を取り入れる入口

石恋に出るようになったのは兼子さん(※1)に誘われたからです。それまでも(手作りのカホンの)キットはあったんですが、ワークショップはやったことがなかったんです。石恋以前と石恋以後でいうと、それまで相手にしていたのは音楽関係の人たちだけでした。自分もそうだったし、相手はみんなミュージシャンでした。しかし、石恋のおかげで、まだ!ミュージシャンじゃない人と触れ合うことができて、話を聴くことができて感想を聴いたりできるようになりました。 そして石恋のおかげで、カホンは、取り組もうという敷居が低い楽器だってわかったんです。たとえば、この年でフルートを習うとなると値段も高いし、難しい(笑)。タンバリンじゃちょっとどうかなあ、マラカス?ボンゴやジャンベ?ときて、カホンがあると思うんですよね。音楽の幅も広いし、誰でもやれそうと思ってもらえる。悪い言い方をすれば、見下されている(笑)。でも、良い言い方をすれば敷居が低い。あれならできそうだと思ってもらえる。その人たちの生活に音楽を取り入れる入口ですよね。チャレンジしやすいってことです。 仙台のジャズフェス(※2)で「カホンを作ろう」の話を楽器屋さんにしたことがあります。運営側が集まるイベントに楽器屋さんが来ていたから紹介してみたんです。でも結局、実りませんでした。「カホンを作ろう」っていうプログラムは、例えば楽器屋さんにポスターを貼ってもダメなんだと思います。石恋のガイドブックはもっと一般的なところにありますよね。音楽に特に関心があるわけでもない人が、石恋のガイドブックを見たら「楽器づくりがあるよ。カホンって面白そう。」ってたまたま見つける、そういうのだからいいんですよね。

(※1)石恋の事務局を務めるNPO法人石巻復興支援ネットワークの代表理事
(※2)「杜の都・仙台」で毎年9月に開催される定禅寺ストリートジャズフェスティバルのこと。

カホン工房Arcoを会場に、青沼さん開発のキットを使って、世界にひとつだけのマイカホンを作ります。

青沼さんのプログラムには、仙台からはもちろん、東京方面から参加する方もいらっしゃいます。

カホンのまち石巻へ

夢は大きく持ちたいと思っています。同じ場所で同じ楽器を使って同じフレーズを演奏するギネスがあるんですけど、カホンはペルーのリマでのカホンフェスティバルに記録があるんです。そこで、カホンを演奏する人たちを1,500人以上集めて叩くのがギネスになっているんですね。記録をつくる、つくらないとかじゃないにしても、カホンのお祭りをするってのはやりたいですよね。中瀬公園(※3)とかどこか広い場所で、ステージがあって、3.2.1でたたき合う。1,000人とか2,000人とかって、ちょっとなかなかすごい数字だけど、石恋の「カホンをつくろう」だけで、実は100個のカホンが石巻に増えました。そしたら、1000は決して遠くないですよね。
音楽をやっている人たちの中に「石巻」という言葉が出てくるんですね。「国産のカホンメーカーで石巻にいいところがあるらしい」って、それをもっと広げられたらいいなって思っています。「ピアノの浜松、カホンの石巻」っていうのは、そういうことです。そのためには、石巻でカホンの認知度が上がらないといけない。「石巻のあそこでカホンを作ってるらしいよ」っていうくらいの知名度は欲しい。そして石恋は、それにとても貢献してくれています。

(※3)石巻市の旧北上川河口にある島(中州)、中瀬に建つ石ノ森萬画館の南側に広がる公園。

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